>>>→TOPへ

牛坂貴陽 /大切な宝物

■■■受賞者一覧へ戻る

平成19年度 第29回中学生の部 優良賞

関東地区代表
茨城 十王町武道振興会

 絆とは何か。そう問われたら、何と答えればいいでしょうか。僕は、この11年間、一度も休まずに 続けた約二千百日の稽古を通して、その答えを得たような気がします。
  僕は、少年部主将で、みんなをまとめる立場にあります。そこで、『みんなの頂点に立ち、みんなから尊敬されるキャプテンになろう』という風に考えていました。しかし、実際には、みんなをまとめることが出来ずに、独りよがりな行動をすることが多かったように思います。先輩達からも『貴陽は力不足だなぁ。』とか『みんなをしっかりまとめろ、それでもキャプテンか。』など叱られてばかりいました。そして試合でも、団体戦はおろか、個人戦でも勝ち進めず、負けてしまうことが多くなりました。試合に負ける度に。
「何で一生懸命やっていても試合に負けるんだろう。こんなつらい稽古をしても、報われないなら、 努力なんてしない。」 と自暴自棄になることもありました。試合の度に兄からも注意されて、自分に足りないものがあることに気付かされました。それからは、みんなの面倒をよく見るようにし、みんなのやる気が出るには、 どうしたら良いかを考えるように心掛けました。すると、どうでしょう。除々に自分の剣道が変わり、 試合にも勝てるようになってきたのです。自分の気持ち次第でこうも変わるのかと、驚かされました。 少年部で活動できるのも残りわずかになってしまいましたが、これからも、リーダーとしてみんなを まとめていけるように頑張りたいと思います。
  今日の4月29日、第32回茨城県少年剣道錬成大会が開催されました。この試合は、まとめの年を迎えた僕にとって忘れられない試合となりました。
  今年のチームは、1年生が3人いて、今までの中学生の中で最弱といっても過言ではありません。 僕は「個々の弱さをチームカでカバーしなければならないな」と結成当初から考えていました。そして、『全国大会に出場する』という目標を立て、日々の練習にも一層、力が入っていました。
  全国大会に出場するためには、予選リーグで勝ち残らなければなりません。一試合を残して、成績 一勝一敗、最後の試合は負けられませんでした。中堅までのスコアは二対一。あとの二人は負けられ ません。副将戦になるとみんな焦っていました。しかし、沼田君が善戦し、引き分けてきて、襷を僕 まで繋いだのでした。その時、今まで剣道で体験したたくさんの出来事が頭をよぎりました。尊敬する先輩達の堂々とした試合光景を見て感動したこと、今は亡き爺ちゃんと剣道の話をして励まされたこと、たくさんの仲間たちと出会い、触れ合うことで様々なことを学び、成長してくることができたのです。僕を何か、不思議な力が後押ししてくれました。そして、ここだという時に身体が自然に動 き、伸び伸びとした技を出すことができました。出頭の小手を押さえ、僕も2−0で勝ち、本数差で 全国大会への出場が決定しました。このとき僕は、このチームの絆を改めて感じることが出来ました。
  11年間の剣道修業で、僕が学んだ一番大きなものは、人と人との持つ絆の力強さではなかっただろうか。そう考えます。今は亡き館長先生の爺ちゃんと、先生である父と、多くの先輩方と、一緒に切磋琢磨してきた仲間と、みんな剣道という絆で結ばれています。そして、これからも、剣道を続けていく限り、新しい出会いがあり、色々な人との絆が結ばれていくでしょう。その絆は、僕にとって、 一生を通じての宝物になると、確信しています。
  大切な、大切な宝物に。