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金子太一 /苦しい時こそ・・・

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平成21年度 第31回小学生の部 優良賞

中国地区代表
岡山県 昇龍館一福道場

 苦しい時こそもう一本”これはぼくの心に強く残っている、先生から教わった言葉です。
ある日、いつものかかりげい古の後、先生はぼくの眼を見て語りかけました。
「苦しい時、息が切れそうな時、そんな時こそ、最後の力を振り絞って全力で打ち込んでみろ!そ の気力、充実した打ちが、自分を強くする本当の力になるよ!」と。その日以来、ぼくはこの言葉を 自分の心の引き出しの中に、大切にしまっています。
  それからのぼくは、まるで秘密の特効薬を得たように、その言葉に何度も助けられてきました。そ れは、剣道の時ばかりではありません。勉強をしている時、学校の体育やクラブ活動の時、そして体 が疲れきって、心の芯まで折れそうになったとき、ぼくはいつもその引き出しを開けるのです。“もう 一問!もう一回!もう一日!”と…。
  ぼくは今年の夏、道場連盟の全国大会の小学生団体の部で、決勝戦まで駒を進め、一段と明るくな ったライトの下、仲間と共に最高の舞台に立つ事ができました。そして、ぼくは思い出したのです。 剣道を始めた頃には、一度は行ってみたいと思っていたあこがれの日本武道館。ここで試合ができる ような自分になれた。そして6年生になった今、この場所で、しかも決勝戦でここに立っていられる なんて…。
  その時、祈るような思いで見上げた天井の八角形は、今でもぼくの胸に焼き付いています。
  小さい頃のぼくは、けい古がいやで車の中に閉じこもったり、家の近くの山の中に逃げ込んだりして、母や周りのみんなを困らせた事が何度もありました。今思い出すと、ちょっと恥ずかしくなるけれど、その頃の自分が、まるで弟のようにかわいく思える時もあります。そんなぼくが“苦しい時こ そもう一本”この言葉に出会い、あきらめない事の大切さに気付いたのです。人は何かを強く思う事で、いつでも変われるような気がします。ぼくが変われたように…。
  ぼくは、剣道だけでなく、人として大切な事をたくさん教えて下さったり、ぼく達をここまで導い て下さった先生方に、心から感謝しています。そして何よりも、厳しいけい古に共に耐え、時には共 に泣き、支え合ってきた大好きな剣道の仲間達、ぼくの大切な家族、自分の子供と同じように優しく してくれた保護者のみなさん、試合の時はライバルでも、終わると最高の笑顔で接してくれる全国に できた友達、それらの全てが、みんなぼくの大切な宝物です。そしてそれは、剣道を続けてきたから こそ得られたものです。
  今、ぼくはたくさんのすばらしい経験や、ぼくの中の引き出しをいっぱいにしてくれた剣道に出会 えて、本当によかったと思います。
  これからも、館長先生が口ぐせのように言われている、一回のけい古を一枚の紙にたとえるなら、 きれいな紙を一枚ずつていねいに重ねていくようなけい古を、がんばって続けて行きたいです。くしゃくしゃな紙や穴があいた紙が、たった一枚混じっていてもきれいな本にはなりません。いつか、中 身のいっぱいつまった、ぼくだけのすばらしい一冊の本が出来る事を信じて、毎日のけい古にはげんで行きます。たとえどんな困難に出会ったとしても、ぼくはまた、そっとこの引き出しを開けるでしょう。  
“苦しい時こそもうひとがんばり!”ぼくなりの言葉に置きかえて…。