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木賊惇也 /孝 道

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平成19年度 第29回中学生の部 優秀賞

中部地区代表
愛知 ナオリ剣道教室

 初めて剣道の試合に出させて頂ける事になった時、先生が僕にくれた手拭いには、「孝道」と書いて ありました。その時先生が、
「孝道とは親孝行するという意味だよ。」
と教えてくださいました。そして、ある時先生が、「どうして剣道ができるのか、どうしてごはんを食べる事ができるのか、考えた事がある人。」と聞かれたことがあります。僕は、何でこんなことを聞くのだろう。当たり前の様に思っていた僕は、考えさせられました。そして、何不自由なく生活が送れるのは、両親が、僕たちの事を考え、時には怒り、時には、はげましてくれたりする事。これは親の愛情なのではないかと考えさせられました。先生の問いかけにより、そういう事を考え、気付かせて頂だけただけでも親孝行だと母は言います。
  そしてある時、ある試合で初めて良い成績がとれた時、先生は、
「親孝行になったな。」
とおっしゃいました。その時僕は、一生懸命応援してくれた先生や親へ少しは恩返しできたのかなぁと感じました。
  僕は自分の力だけで稽古ができるわけではありません。先生の教えや、家族の協力、道場の仲間との苦しい稽古をわかち合い、はげまし合い…。そういう全ての事があってこそ稽古に挑め、それによ り精神的にも肉体的にも練磨され、立派な人間になっていけるのではないかと思っています。そしてそれが、先生や親に対する孝行であるのだと思っています。
  最近、新聞やテレビで、取り出されている未成年の犯罪がよくおこります。その中でも子供が両親を殺したり、家に火をつけたり、という事件が多発しています。新聞や、ニュースによれば、進路に悩んでいたとか、親がうるさいなどという理由で、親を殺そうと考えることが、僕にはとても理解できないものでした。自分勝手な考え、命の尊さ、なぜそれが理解できないのでしょうか。たまにはうるさいなぁとか、わかってるよなどと思う事はたくさんありますが、殺すとか、放火するなどという気持ちは思った事がありません。しかし、この人達が一つでも、一生懸命に打ち込める何かがあり、色々な人達との係わりを持ち、本当に信じれる人達がいたら、こういう事件など起きなかったのでは ないかと思います。僕には剣道という物を通して、打ち込める物、色々な人達との出会いがあります。そういう事を教えてくれた先生、そういう場を持たせてくれた両親、友人に感謝したいです。
  そして今、こういう方々に教えを頂き、支えられながら、自分に責任を持ち、行動し、失敗し、反 省し、新たにチャレンジしながら先生や両親に見守られ、人間形成をしていきたいと思います。
  それが、先生のよくおっしゃる「守破離」という言葉の「守」の時期、つまり、僕の今の年なので はないかと思います。そして「守破離」の「破」の時期が来るまで、たくさんの事を経験し、人間としての基礎を作っていきたいです。そして「破」の時期が来た時、色々な方々の教えを素直に聞き入 れる耳を持ちながら、自分の考えをしっかりと持ち、少しずつ前に出て自分という物を作っていきた いと思います。そして「離」の時期が来た時、僕は今まで支えて来てくれた人達へ少しでも恩返しが出来るような人間になっていたいです。
  これが、きっと先生がおっしゃっていた「孝道」であるのではないかと思います。そして、まだま だ先は長いけれど、何事にも、一生懸命生きる事こそが、僕にとっての「孝道」という意味なのではないかと思います。