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大村春奈 /心の剣道

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平成20年度 第30回中学生の部 最優秀賞

中部地区代表
三重県 旺武道場

 私は4年生から剣道を始め、今年で6年目になります。同い年の子より後から剣道を始めた私は、 毎日毎日みんなに追い付くために必死に練習していました。いつも先生や母から、
「いつでも感謝の心を忘れないで。」
と言われ、私は一回一回の稽古を大切にして練習し、試合に出してもらえること、この試合場、道 場へ連れて来てもらえてこうして試合、稽古ができることに感謝して剣道に打ち込んでいました。
 私は今年、中学3年生になりました。一生懸命練習して、今は夏の主な大会も終わり、残る大会はあとわずかになりましたが、試合でもたくさん勝ち進むことができるようになってきました。
  しかし、試合で勝ち進んでいく回数が増えるにつれて、私は「手を抜く」ことが少しずつ多くなっ ていきました。今まで真剣にやっていた道場の稽古までも知らず知らずのうちに手を抜くようになっていました。その気持ちは道場の中学生にも広まり、稽古も少しずつだらけるようになっていきました。遠いところから稽古に来てくださった先生方にもあまり積極的にかからなくなり、さらに、自分の道場の先生にまでもかからないようになっていました。
  しばらくその状態は続き、半年ほど過ぎたころ、私たち中学生は先生に、
「もう道場へは来なくていい。」
と言われました。私たちは先生にあやまりましたが、先生はその日、私たちを許してはくれません でした。
  私はこの日、今までの自分を振り返りました。自分がここまで来ることができたのは自分の努力もあるかもしれないけど、それ以上に先生方、そして親の支えがなければここまで来ることができなかったはず。なのに私はそんな大切な方々への感謝の気持ちを忘れ、傷つけてしまいました。剣道をしている者として一番忘れてはいけないこと、一回一回の稽古の大切さ、こうして稽古ができることのありがたさ、そして一番大切な自分を今まで支えてくださった方々への感謝の気持ち。改めて、自分がどれだけ情けないことをしていたのかを知りました。
  その後、私たち中学生は全員で先生の家を訪ね、今までの行動を振り返り、先生と話し合い、許してもらえることができました。あれから私たち中学生は以前のように一生懸命稽古に打ち込めるようになりました。
  私は今、あの時先生が私たちを叱っていただいたことに心から感謝しています。もしそうでなかったら、私はきっと今も気付かないまま剣道を続け、これからの試合でも勝ち進んで上位進出することはできなかったと思うし、例えそうであっても、それは長くは続かないし、意味のないことだと私は思います。
  私は、中学3年生になって改めて自分にとっての剣道の大切さ、そして感謝の心の大切さを学びました。
  私にとって剣道は「心」そのものです。何かを悩んでいる時や悲しいことがあった時、「心」の何か がかけている時は思いきった技を出すことができません。もちろん、「感謝の心」がなければ思いきった技も、声も出ません。
  だからこそ、「心」を大切にして、これからも剣道と共に成長していき、今後高校生、大学生、そして社会人になっても感謝の気持ちを忘れず、先生方に教わったこのすばらしい「心の剣道」で恩返しをしながら人間形成に努めていきたいと思っています。