>>>→TOPへ

渡部祥山 /まっすぐな紙

■■■受賞者一覧へ戻る

平成20年度 第30回小学生の部 優良賞

中部地区代表
愛知県 健礼会近藤道場

 「まっすぐな紙を1枚1枚重ねていくような努力」これは、ぼくの道場の先生が毎日のようにおっ しゃる言葉です。
  ぼくは、剣道をはじめて5年目です。この5年間で剣道をとおして得たものは、それは何かを考えてみました。「根性」「精神力」「集中力」「健康な肉体」まだまだいろいろあります。では、なぜそれが得られたか。それは、「毎日の努力」と「きつい稽古」のおかげだと思います。「毎日の努力」とは、 毎日学年X百の素振りを真剣にすることと、学年×1行の漢字をやることです。「きつい稽古」とは、道場での2時間半の稽古を、さぼらずにやりこなすことです。しかし、1年中、これらのことをさぼらずにやるということは、とても難しいと思います。「遊びたいなぁ。」と思って休みたくなります。 さぼると、せっかく積み重ねてきたまっすぐな紙の中に、ぐしゃぐしゃな紙が1枚はさまってしまいます。そのぐしゃぐしゃな紙を作るのは、稽古相手でもなく、試合相手でもないのです。地球上をさがしてもいないでしょう。なぜなら、その敵は、ただ一人、ぼくの心の中にひそんでいる真の敵だからです。ぼくは、その真の敵をたおそうと思っています。しかし、ぼくは、今まで何度も、毎日の素振りが、続かなかったことがありました。毎日の漢字をためてしまったこともありました。一生懸命に真の敵をたおそうとしてきましたが、誘惑にまけて、三日坊主のようになったことが何度あったことでしょう。
  5年生の夏休み、全国大会に行きました。ぼくは、4年生の時にも参加させてもらっていたので、 なんとなくのんびりかまえていました。しかし、日本武道館についたら、どんどん緊張してきました。そういえば、素振りをさぼってしまったことがあったなあ、とか、漢字をさぼってしまったこともあったなあ、ということが急に気になりはじめました。ぼくはがんばったつもりですが、結果はあまりよくありませんでした。東京から帰り、いろいろ考えてみました。ぼくは、真の敵に負けていたから、試合に集中できなかったんじゃないかと思いました。素振りと漢字に加え、家の隣の公園のまわりを5周走ることにしました。ぼくは、がんばって努力すれば、きっとぐしゃぐしゃな紙のまじらないまっすぐな紙のきれいな山ができると思います。
  道場の先生は、命の大切さについても、お話してくださいます。最近、小中学生の自殺や肉親が殺しあうような悲惨な事件が多発しています。命は、両親から授かったものであり、けっして自分だけのものではありません。今年の春、先生のお父さんの大先生が97歳でお亡くなりになりました。大先生は、僕が入門した1年生の時は、すでに、道場には、お見えにならなくなっていましたので、直接 剣道の稽古をしていただいたことはありません。しかし、大先生のお話を聞いたことは、何度かあります。大先生は、戦後剣道の復興に貢献された偉い方だそうです。お葬式に行ったらあまりにもたくさんの人がいらっしゃり、びっくりしました。ぼくは、大先生のように長生きして、世の中のために なることをしたいなあと思いました。そして、命がなによりも大切にあつかわれる世の中にしたいで す。
  ぼくは、これからも、ぐしゃぐしゃな紙がまじらないように「毎日の努力」と「きつい稽古」にたえ、度胸のある立派な人間になりたいです。また、人の命を大切にできる人になりたいです。これか らも、剣道をとおして多くのことを学び、立派な剣士になろうと思います。