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渡辺隼平 /一日一善

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渡辺隼平

平成22年度 第32回中学生の部 優秀賞

近畿地区代表
兵庫県 照道館樋ノ口少年剣道会

 「この銅像何だろう」「あの老婆を背負った人誰だろう」皆さんは笹川良一先生の「孝子の像」「我が母への讃歌」を知っていますか。「母背負い宮のきざはしかぞえても、かぞえ尽くせぬ母の恩愛」と書かれているのです。合宿で小豆島に行くといつもこの銅像が気になっていた。先生にこの銅像が誰なのか尋ねると、笹川良一という人でたくさんの慈善事業をされ社会貢献された人である事。剣道でもその力を発揮され様々な大会を支えてくれている事を教えてくれました。母にも聞くと小さい頃、テレビのコマーシャルで「一日一善」という言葉が謳われていてその意味を知ったそうです。僕の心の中に今でも強く僕の心の中に今でも強く焼きついて残っていたのです。
  小学校から始め、休む事なく続けてきた剣道、試合に出られる、剣道が出来る事の嬉しさ。しかし中学に入ってから180度変貌し、情熱が冷めていった。母にガンが見つかったのです。その日から母は目に涙をためながら洗濯の仕方、ご飯の炊き方を厳しく毎日教えるのです。そんな気持ちで剣道など出来るはずがない。とても辛い日々が続いたのです。自分は何の為に剣道をやっているのだろう。自分は本当に剣道が好きなのだろうか。道場へも足が遠のいている自分がここにいる。このままではだめだ。自分では分かっている。なぜだ…母は僕の変わり様に叱咤激励を繰り返す日々が2年続いた。母にもひどい態度をとるようになった。どんどん底のない沼に落ちていくような気分だった。よし、もう一度原点に戻ろう。攻められた時の心の状態は自分が一番よくわかっている。弱気ではなかったか。焦ってはいなかったか。邪念やおごりはなかったか。姑息な思いは起ってなかったか。先生からも剣道は「相手の動いた所を打て、動かなければ打ってはならない。動かなければ動かして打て」と言われた事を思い出しました。勝つ為にはその試合が集中の極限にある事。焦る僕に館長先生はとにかく時間を作って道場に来いと言い、憂うつのまま道場に顔を出すと、小さい後輩たちが笑顔で僕を迎えてくれるのです。ある子は「ぼくなぁ、隼平先輩みたいになりたいねん」ある子は「ぼく、先輩が稽古に来てくれたらめっちゃうれしいねん」とニコニコしながら集まってくれる。僕は一体何をしていたんだろう。今の自分には自信など全くない。だが周りの人を笑顔にできる。こんな僕でも目標にしてくれている後輩達がいる事が本当に嬉しかった。今まで何度もの挫折を繰り返しながらも一生懸命にやってきた事は決して無駄ではなかったという事をこの身で感じることができました。剣道が強くなることももちろん大切ですが、これから生きて行く中でもっと大切なことがある事を周りの無償の愛情で知り、少しずつ変っていく自分に気付かせてくれた人達に感謝したいと思います。小さい時に見たあの笹川良一先生の銅像は、笹川先生がお母さんを背負い、785段の石段を登ってのお宮参りの銅像でした。僕の事を心から応援し、励ましてくれる母の気持ちに素直に答え、ありがとうを行動にうつしていこうと思います。心配ばかりかけた母に、小さいころに見た銅像の様にいつか僕の背中に負ぶってあげられる時が来る日を待っていて欲しい。そして僕にできる一日一善。後輩達の竹刀の点検、着装ができているか、自分なりに実行しています。剣道の修行は一生のものである。人間形成の道も一生のものである。つまり心の修行である。真っ直ぐな心を持った人間として良好な人間関係を築き、僕らしくこれからの人生「一日一善」を頭において歩んでいきたい。どんな世界に進んでも「必要」とされる人になりたい。そのためにはこれからも努力を続け、謙虚さを忘れずに進んでいかなくてはならない。道場の「磨剣断迷」の言葉を胸に頑張りぬきます。