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工藤朋也 /新しい自分になろう

平成21年度 第32回東北地区剣道少年団研修会 小学生の部 最優秀賞

福島県代表
富岡町少年剣道団

 朝、お母さんに起こされバタバタしながら学校へ行って、授業を受けて給食を食べる。帰ったら大急ぎで宿題を済ませて 友達と遊んだりおやつを食べたり何となくついているテレビを見て夕ご飯を食べて風呂に入って寝る。剣道を始めるまで の僕はほとんどこんな感じの毎日を過ごしていました。剣道に出会わなければ、ずっと変わらないこの繰り返しだったと 思います。
 僕が通っている富岡町少年剣道団は創立三十八年の伝統ある剣道団です。基本を第一にする稽古はもちろんですが、そ れ以上に大事にしているのが道徳教育です。時々稽古の前に勉先生から武士道の話や陽明学の話などをしていただいたり します。いろんな教えをいただいたその中で僕が一番心を動かされたのは、「躾の三原則」です。「はい」という返事を する、あいさつをする、履き物をそろえるの三つです。初めて聞いた時、
「なんだ、普通のことじゃないか。」
と思いました。誰でもやってる、誰でも知ってる当たり前のことです。でも・・・その当たり前のこと、僕は出来てる? 改めて自分の生活を振り返ってみました。
 朝、家族には寝ぼけた顔と声のまま「おはよう」、友達にも目を合わせないで「おはよう」、家に帰ったらくつはその ままぬぎっ放し、何か言われた時には聞こえないような声の「はい」。出来ているはずの当たり前のことが何一つきちん ど出来ていないことに気付きました。
  「知るは行いの始まり」、僕は行動に移すことに決めました。親や先生に頼まれたときにには大きな声ではっきりと「 はい」、くつをぬぐ時は必ずそろえます。それは家の玄関も学校の昇降口のげた箱も同じです。あいさつは「明るく」「 いつも」「先に」「続けて」に加えて、大きな声で笑顔ですることにしました。最初は恥ずかしく声も小さくなりがちで した。返事もつい、「うん」と言ったり、「後でやればいい」とくつもぬぎっ放しになったりしました。でも少しずつ一 つずつ一つずつ意識してやるようにすると、気にしなくても出来るようになりました。
 この三つが出来るようになると、僕の変わらなかった毎日が少しずつ変わり始めました。先生に「はい」と返事をする ことで不思議と授業に前よりも集中できるようになりました。履き物をそろえると、リズムのある生活を送れるようにな りました。だらだらテレビを見たり後回しになっていた宿題が、言われなくてもやれるようになりました。そして一番変 化したのは何事も自分からすすんで取り組めるようになったことです。それまでは何でも人任せでみんなの意見に何も考 えないで従っていたのですが、「大きな声でのあいさつ」、たったそれだけで自分からすすんで何かをするということが できるようになりました。するとすべてのことに少しずつ自信がつき始め、学校で参加している合唱の練習でも前よりも 大きな声で気持ちをこめて歌うことができるようになりました。三つのことを意識して行動に移すことで、自分の行動や 言動が丁寧になり責任が持てるようになる、「新しい自分」になることができたのです。
 剣道ではなかなか結果が出ません。稽古もきつく途中で休んだり見学したりすることもあります。一緒に入団した三年 生に負けることもあります。以前の僕なら諦めてしまったでしょう。でも今は違います。今の僕は「新しい自分」なので す。三つの教えをこれからも守り、仲間や先生方と稽古をしながら新しい自分を探し続けていこうと思います。