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降矢信雄 /指導者研修会に参加して

東京都 大義塾

平成22年11月24日 七段合格

 

「いつになったら受かるのだろうか。」「このままの練習方法で良いのだろうか。」皆さんもこんな思いを経験したことがあることと思います。剣道に限らず、何か成果を求めれば、時として自信を失い現状の方法に疑念を抱くことがありますが、しかし何らかのきっかけで局面が打開する、或いは壁を乗り越えることができることも私たちが日常経験するところです。
私は、平成19年の夏に七段の受審資格を得てから3年余り、その間全ての七段審査会にチャレンジしてきました。これは次にある審査会に向かって、稽古し気持ちを高めることが自分の技能の向上に繋がると思ったからです。しかし結果は散々で、昨年夏の新潟の審査会まで10回の審査に落ちに落ち続けて、冒頭の思いに至ることも一度や二度ではありませんでした。また、受審し始めた頃には腰痛や肉離れを発症し、一時はこれきり剣道が出来なくなるのではないかと思ったこともありました。
○ 有意義であった指導者研修会
こうした中、全日本剣道道場連盟主催の「剣道指導者研修会」のことを聞き、ここ2年程前から春と秋の研修会には必ず参加させてもらうようになりました。この研修会は、全国から昇段を目指す人達が3日間寝食を伴にし、かつ一流の講師陣による指導を仰ぎながら、朝から晩までまさに“剣道漬け”となるものです。剣道講話を始め剣道形や実技指導といった充実したカリキュラムの中でも、最も重要なのが初日と最終日の立会です。講習生は、講師の先生方を前にして本番さながらの立会を行います。そこでは自分の実力が否応なくさらけ出されることとなります。私も思うようにいかない立会にふがいなさを感じながらも、一番一番的確でかつ温かみのある先生方のご指導に励まされ、また考えさせられたことが現在の自分に繋がっており、この研修会には大変感謝している次第です。
○ きっかけをつかんで
さて、私が今回七段をいただくことができたのは、幾つかの「きっかけ」をつかめたからだと思っています。これは、たまたまつかめたとか幸運であったとは少し違います。稽古を重ねていくことによって(必然的に)つかんだ結果だと感じているのです。
その一つは今回の指導者研修会での立会で太田忠徳先生から「降矢君は性格のせいか優しい剣道である。」という評価をいただいたことです。この「優しい剣道」とはいったいどういう姿なのか?私は暫くイメージがつかめませんでしたが、とにかく「優しい剣道ではだめだ!」ということは分かりました。
そうした中、過去の自分の立会のビデオを見ていて、早く打とうとするあまり、その打ち方が山なりで却って鋭さに欠けていることに気が付きました。これが太田先生が「優しい剣道」と言った点ではないか……!ここに気が付いたのが二つ目のきっかけです。
また、私は以前ある先生から「おまえはその面が打てるのだからそれでいけば良い。」と言われていた面の打ち方がありました。(しかし、自分ではそれでいけば良いか、なかなか決断できなかったのです。)さらに別の先生からは、剣道の極意は出鼻技であり、どんな技でも出てくるその時には必ず出鼻がある。ことに審査では出鼻面が審査員の心を打つのではないか、という指導をいただきました。ここでも、出鼻技、或いは出鼻面にこだわる必要はないのではないか、と気持ちは相当に揺れ続けましたが、審査前にわずかにそのタイミングがつかめてきた気がして、この面でいこうと決断できたのです。
これら諸々の「きっかけ」が私の感覚の中で何かうまく融合し合い、審査の少し前辺りから良いイメージが描けるようになりました。審査当日も少しの自信と落ち着きをもって臨めたことが良い結果に繋がったものと思います。
○ 今後の心構え
審査会以降、何人もの人からお祝いの言葉をいただき、本当にうれしいかぎりなのですが、私の道場である大義塾の師範篠塚増穂先生からは、これからは七段として自分の習得したものを「伝えていくこと」と「動じない心(腹)を養うこと」を示されました。私はこの二つを今後の指針として、またこの他沢山の先生方からの教えを糧として、稽古、剣道形、試合を楽しみながら、七段としての修行を続けていきたいと思っています。